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小児がんゲノム医療の実現へ

JCCG-TOP2研究は、小児がん患者さん一人一人に、遺伝子情報に基づいた最適な医療 “Precision Medicine”を提供することを目指して、日本小児がん研究グループ(Japan Children’s Cancer Group: JCCG)が中心となって行っているプロジェクトです。 がんに対する「ゲノムプロファイリング検査(遺伝子パネル検査)」は、すでに診療の現場で用いられるようになっています。

しかし、2021年8月現在、保険承認されている遺伝子パネル検査は、治療標的の同定を目的として、主に頻度の高い成人がんを念頭にデザインされたものであり、小児がん患者にも実施することができるものの、小児がんの診療に十分なものにはなっていません。

小児がんゲノム医療をより良いものにするためには、まず、小児がんゲノムの特徴を踏まえて、小児がんに特有な遺伝子異常を検出できるような新しい遺伝子パネル検査が必要です。こうした観点から、小児がんの診断や治療の専門家、がんゲノムの専門家たちが協力し、小児がんに対してさらに役立つ遺伝子パネル検査として、Todai OncoPanel 2(TOP2)検査の開発を行っています。

小児がん診療に役立つ遺伝子を追加するとともに、融合遺伝子などの遺伝子異常を検出しやすいようにRNAパネルが追加されています。さらに、希少がんである小児がんにおいては、がんの発症の時点から遺伝子パネル検査を導入することにより、治療標的の探索のみならず、より正確な診断、リスク分類にも有用であると考えています。

現在、小児がん研究グループ(JCCG)が実施している病理組織検査、画像検査、分子生化学的検査などに基づいた「小児がん中央診断」に、TOP2検査で得られた遺伝子情報を追加することにより、さらに精度の高い統合診断が可能となります。

今後、全国の小児がん患者さんが、より適切な小児がんゲノム医療を受けられるようになるためには、各地の小児がん診療施設が検査を提出し、ゲノムプロファイリング検査で得られる解析結果を診療に役立てる形で担当医師、患者さんに返却するための体制づくりが必要です。そこで、小児がんの診療においてこのTOP2検査の意義を確認し、実際に検査として広く行うことが可能なのか、そのためにはどのような体制が必要なのか、を検討するための観察研究を計画しました。

臨床研究・観察研究とは

小児がんのような発生数の少ない病気の場合には、全国のそれぞれの病院で別々の方針で診断や治療を行っていると、その診断法や治療法の意義はいつまでたってもわかりません。そこで、その時点で最も効果が期待できると考えられる治療法や診断法を多くの患者さんに行い、より良い治療につなげるための情報を集めるのが「臨床研究」です。いまの小児がんの診療に必要な情報も、これまでの数多くの臨床研究によって明らかになったことです。日本でも、全国の小児がんの診療施設が連携しJCCGという組織を作り、臨床研究に取り組んでいます。 →「日本小児がん研究グループ」(リンク)

臨床研究の中で、この「JCCG-TOP2」のように、治療そのものは通常の診療として標準的な(=その時点でもっとも確実でいいと考えられる)治療を行い、登録した方の治療経過や検査結果などの情報を収集して、病気の性質や検査法や診断法の意義を調べる研究を「観察研究」といいます。

研究の方法について

この研究では、がんの診断や治療の経過の中で採取された組織のうち、診断に使用した残りを用いてTOP2検査を実施します。また、検査で検出されたゲノム異常が生じた過程を正常な組織と比較して確認するために、血液を同時に検査します。組織と血液は、担当医から国立成育医療研究センター中央病理診断部に提出され、確認を行った後に、コニカミノルタプレシジョンメディシン社およびテンクー社に送付してTOP2検査が実施されます。

小児がんのゲノム解析に関する専門家に加え、病理診断や遺伝性腫瘍などの専門家も含めたエキスパートパネルで解析結果を検討し、より役に立つ検査レポートとして担当医に届けます。エキスパートパネルでは、得られた検査の結果の意義を判断するために、あなたの診断に関する情報(年齢、性別、検査結果、既往歴、家族歴、治療経過など)を担当医からいただきます。あわせて、小児固形腫瘍観察研究に提出していただいた情報や、中央病理診断の情報も参照し、より正確なゲノム診断の情報として結果を報告できるようにします。

解析の結果は、レポートの形で担当医に返却されます。検査に提出してからレポートを受け取るまでの期間や、レポートがどの程度診療に役立つ結果か(実際に役に立ったか)、などの情報も担当医からいただきます。